どうも、札幌の弁護士の立花です。
今日は、交通事故のコラムです。
保険会社からの示談提示がなされた際、「画像上、年齢の変性が確認できるため、10%を過失相殺しています」などと一見もっともらしい主張がなされることがあります。
この主張は、要するに、交通事故被害者の痛みの原因の一部には、被害者の持っていた性質が影響しているのだから、賠償金の全額を保険会社が負担するのはおかしい・・・という主張になります。
この主張・・・通るのでしょうか。
この点、実務で参考にされる判例があります。
具体的には、最判平成8年10月29日民集50巻9号2474頁の判例です。
この判例では、「被害者が平均的な体格ないし通常の体質と異なる身体的特徴を有していたとしても、それが疾患に当たらない場合には、特段の事情の存しない限り、被害者の右身体的特徴を損害賠償の額を定めるに当たり斟酌することはできないと解すべきである。」という判断がなされています。
要するに、賠償金を減らすことができる身体的特徴とは、その特徴が疾患に至っているものに原則として限られるということです。
これを先程の事例に当てはめて考えると、首や腰に年齢から来る変性があったとしても、年相応のものであり、特に診断名などがつかない程度のものであれば、賠償金額の減額はできないということになります。
一方で、事故前に診断名などがついていないとしても、その変性が疾患(持病)
レベルである場合、裁判などで争うと、賠償金額の減額がなされる恐れがあるということになります。
そうすると、交通事故被害者として大事なのは、相手方の主張する素因減額の主張について、それが認められるものかどうか、言い換えるならば、交通事故被害者の身体的特徴が疾患レベルに至っているかどうか、示談前に判断することになろうかと思います。
ですので、示談金の提示があった時、よくわからない減額主張がなされている場合には、一度弁護士にご相談いただいた方が良いのではないか・・・と思います。
以上、今日は、年齢変性があっても損害賠償額は、減らされないことが多いよというコラムでした。