自転車対自動車の過失割合で自転車側が忘れがちな主張(交通事故)No.151

 どうも、札幌の弁護士の立花です。

 

 今日は、交通事故のコラムです。

 

 

 

 自転車対自動車事故の際、自転車側の過失割合について、保険会社は「自転車に乗っている」という点を挙げ、歩行者に比べ、重い過失割合を主張してくることがあります。

 

 このようなとき、自転車側の過失割合を歩行者対自動車の場合の歩行者側に近づけることはできないでしょうか。

 

 この点、私は、「自転車の速度が低速な場合、実質的には、自転車は、歩行者と同視し得るため、自転車対自動車の過失割合を使用することは妥当ではない。」という主張を行うことが良くあります。

 

 

 

 まず、自転車対自動車の事故で、自転車の過失割合が歩行者よりも重くなるのは、自転車が歩行者よりもスピードが出ており危険であることに理由があります。

 

 そうすると、自転車の速度が低速で、その危険性が一般的な自転車と同じ程度とは言えない場合、「自転車に乗っている」という事象のみを切り出して、自転車対自動車の過失割合を適用するのは、妥当ではないと言えそうです。

 

 実際に、「低速の自転車については、歩行者と同視し得る余地がある」ことについては、別冊判例タイムズ38の383頁に記載があります。

 

 ただし、この主張を認めさせるためには、大きな壁があります。

 

 それは、事故時の自転車の速度の立証が困難であるという点です。

 

 皆さんの自転車に速度計などがついていることは稀なため、直接的に自転車の速度が遅かったことを立証するのは難しいです。

 

 

 

 そこで、私としては、自転車が停止から走り出した場合であれば、「走り出しだから速度は出ていなかった」、込んでいる横断歩道であれば、「混んでおり速度を出すことは考えられない状況であった」など、周囲の状況から速度を推認する方法をよく使います。

 

 このようにして、自転車の速度が低速であると言えた場合、過失割合を自転車対自動車ではなく、歩行者対自動車の割合とする余地があるのです。

 

 一方で、保険会社は、そこまで深い検討をすることは稀です。

 

 もし、自転車に乗車中、事故に遭い、保険会社の提示する過失割合に納得ができない場合、ぜひ、一度ご相談いただけますと幸いです。

 

 以上、今日は、自転車対自動車の過失割合について、自転車側が盲点になりがちな主張のお話でした。

 

 

 

 弁護士 立花志功

2022年10月05日