どうも、札幌の弁護士の立花です。
今日は、交通事故、IT事件の両方にまたがるコラムです。
先日より、某SNSでお寿司屋さんでの迷惑行為の動画が拡散され、社会問題となっています。
一説によると、損害賠償は、数百億にもなるという風説もありました。
しかしながら、あの件で、法律的に賠償金が数百億になるかというと、その可能性は極めて低いのではないかと思います。
理由は簡単で、迷惑行為と何百億の損害との間に「相当因果関係」が無いからです。
例えば、交通事故で怪我をして、右肩が負傷したとします。
その時、「もしプロ野球選手になっていれば年俸が20億円の可能性もあったから、その分を補償しろ」という主張をしたとして認められると思いますか?
その交通事故に遭った方がプロ野球選手であれば、認められる可能性が無いとは言えませんが、一般人であれば認められません。
これはなぜかというと、交通事故と損害との間に「相当」因果関係が無いからです。
一般の方への説明は、なかなか難しいのですが、ある行為によって、ある損害が発生したとしても、その全てが加害者に対する損害賠償として認められるわけではありません。
ある不法行為によって生じる損害は、無限に広がり得るおそれがあります。
バタフライエフェクトの様な形で、小さい損害であっても、それがどんどん繋がってやがて様々なところに派生する損害となってしまうことがあるからです。
このように、ある行為から派生した損害の全てを加害者に負わせるのは、あまりに酷であるとされ、法的には、ある行為からその損害が生じるのが「社会通念上相当だよね」といえる損害に限って賠償を認めることになっています。
それゆえ、あの迷惑動画によって、発生したとされるすべての損害について、賠償責任を負わされることはないのです。
ただし、どこまでの損害を社会通念上相当と言えるかについては、ケースバイケースであり、なかなか難しいです。
一般の事件であれば、裁判官のみが知ると言えます・・・
交通事故やIT事件での賠償請求も同じで、全ての損害が賠償されるというわけでは無いことは、是非知っておいてください。
以上、今日は、賠償額が「無限」とはならない理由に関するコラムでした。