後遺障害逸失利益における基礎収入の考え方(交通事故)No.93

 どうも、札幌の弁護士の立花です。

 

 今日は、交通事故において、後遺障害が認められた際、認められる後遺障害逸失利益に関するコラムです。

 

 

 

 交通事故被害者の方につき、示談書が送られてきた際、是非確認してほしいのは、「後遺障害逸失利益」の項目です(後遺障害が認定されている方のみ)。

 

 「後遺障害逸失利益」の項目欄に、その算定根拠となる計算式が記載されていることが通常かと思いますが、どうでしょうか。

 

 

 

 具体的には、

 

 基礎収入×0.05(14級)×4.57(労働能力喪失期間5年)などと記載されているのではないでしょうか。

 

 このうち、0.05の部分は、後遺障害の等級に応じて決まっていますので、インターネットなどで調べれば妥当性が判断できます。

 

 

 

 一方で、労働能力喪失期間は、一般に弁護士基準より短いことが多く、むしろ、「妥当でない」ことの方が多いです。

 

 では、「基礎収入」はどういった数字が妥当なのでしょうか。

 

 ズバリ、原則的には、「事故前年度」の年収であれば適正となります。

 

 しかしながら、例外もあります。

 

 

 

 例えば、交通事故被害者の症状固定時の年齢が30歳未満の若年者であるときがあります。

 

 若年者は、将来的に年収が上がることが想定されるため、基礎収入を事故前年度のものとすると、後遺障害逸失利益が低くなりすぎます。

 

 それゆえ、若年者の基礎収入に関しては、全年齢の平均賃金とすることが一般的です。

 

 

 また、主婦に関しても、女性の平均賃金を使うことが一般的です。

 

 確かに、主婦に関しては、家事労働に関して収入が発生することはありません。

 

 しかしながら、家事労働を金銭的に評価しなければ、妥当な損害を導くことはできませんので、交通事故実務上、女性の平均賃金を家事労働者の年収と考えるのです。

 

 

 最後に、現時点で無職である方の基礎収入も別途の考慮が必要です。

 

 無職者は、基礎収入がゼロとなりますが、今後就労する意思と能力があり、仕事に就く可能性が高い場合には、一定の基礎収入が認められ、後遺障害逸失利益が認められることがあります。

 

 このように、後遺障害がついた方の基礎収入については、低く抑えられていないかの注意が必要です。

 

 したがいまして、示談前には、必ず基礎収入について、確認していた方がよいかと存じます。

 

 

 

 以上、本日は、後遺障害逸失利益における基礎収入の考え方のコラムでした。

 

 

 

 弁護士 立花志功

2022年07月04日